連続的に心拍出量や体血管抵抗などをモニタリングし、主に心機能(前負荷、後負荷、収縮力)を評価するために使用されるシステム。
重症患者(特に敗血症患者)に使用される。
ビジレオモニター(フロートラックシステム)で測定できるパラメータと基準値
略称 | 内容 | 基準値 |
---|---|---|
CO | 心拍出量 心臓が1分間に送り出す血液の量 | 4.0~8.0 mL/min |
CI | 心係数 心拍出量を体表面積で割った値 体格による心拍出量の個人差を補正 | 2.5~4.0 L/min/m2 |
SV | 1回拍出量 心臓が一回の収縮で拍出する血液の量 | 60~100 mL/beat |
SVI | 1回拍出量係数 1回拍出量を体表面積で割った値 体格による一回拍出量の個人差を補正 | 33~47 mL/beat/m2 |
SVV | 1回拍出量変化 1回拍出量の呼吸性変動を%で表した値 | 10~15% |
SVR | 体血管抵抗 左室の拍出に対する体血管の抵抗 | 800~1200 dyne・sec/cm5 |
SVRI | 体血管抵抗係数 SVR算出時にCOの代わりにCIを使用したもの | 1970~2390 dyne・sec・m2/cm5 |
ScvO2 | 中心静脈圧酸素飽和度 酸素供給と酸素運搬の関係を示すパラメータ | 65〜75% |
ビジレオモニターはとりあえずSVV見とけ!!

ビジレオモニターはSVVを見て脱水になってないかどうかを見るためだけに付けてると言っても過言ではない
って救急科の医師が言ってました(笑)
※医師によります
- 循環血液量が不足していると、吸気時と呼気時の血圧(動脈圧)の変化(=呼吸生変動)が大きくなる。
- この呼吸性変動を変化率で表した数値がSVV(一回拍出量変化)である。
循環血液量が不足するほどに変化率が大きくなるので、SVVの値は血管内脱水の指標になります。
一般に、10〜15%以上で輸液反応性がある(輸液を入れることで循環動態が安定する)と言われています。
SVVの数値が大きいほど循環血液量不足(脱水)です。
アセスメント例

例1)尿量も増えて、SVVも7%ぐらい保ててるので、大分血管内に水戻ってきてそうです!

例2)血圧下がり気味で、SVVも上がってきてるので脱水気味かなと思うんですが…輸液負荷しますか?
こんな感じで報告や申し送りをすれば「お、こいつ分かってるな」と思われること請け合いです(笑)
ビジレオモニターで前負荷の評価をする
これだけ項目があるのに「SVVだけ見とけ!以上!」ってのもあんまりなので、一応他の指標の見方も学習しておきましょう。
前負荷(循環血液量)の評価は先述のSVVが最有力ですが、CO(心拍出量)、CI(心拍出量係数)も前負荷の指標になります。
循環血液量が減ると心臓が一回に拍出する量が減るので、COとCIが下がります。当たり前ですね(^ω^)
SVV(一回拍出量変化)、CO(心拍出量)、CI(心拍出量係数)
ビジレオモニターで後負荷の評価をする
後負荷の変化はCO、CI、SVR、SVRIを見ます。
後負荷とは心室が血液を駆出する時に受ける抵抗なので、SVR(体血管抵抗)がこれにあたります。
抵抗が強い=末梢血管がしまっているということなので、
SVRが高い=血管の抵抗が強い=末梢血管がしまっている
というように考えます。
逆に、SVRが低いときは
SVRが低い=血管の抵抗が弱い=末梢血管がひらいている
ということになり、こちらの方が臨床上問題になることが多いです。
何故なら
末梢血管がひらく
⇨末梢の血液量が多くなる
⇨心臓に戻る血液量(循環血液量)が減る
⇨CO(心拍出量)が減る
⇨血圧が下がる
からです。敗血症になると血圧が下がるのはこの機序によるものです。
SVR・SVRI⇨CO、CI⇨血圧 の順番で低下していくので、敗血症のリスクのある患者さんのSVRが低下したら

これから血圧が下がるかも知れない。
ノルアドレナリン(抹消血管をしめる薬)を用意しておいた方がいいかな。
とアセスメントして準備をすることができます。
アセスメント例

熱が上がって、SVRも下がってきました。
敗血症に移行する可能性が高そうですが、ノルアドレナリンを用意しておきますか?
SVR(体血管抵抗)、SVRI(体血管抵抗係数)、CO(心拍出量)、CI(心拍出量係数)
ビジレオモニターで心臓の収縮力を評価する
収縮力の評価は、CO、CI、SVV、SV、SVRIを見ます。
え、そんなに見なきゃいけないの?と思うかも知れませんが、要は
- 収縮力が低下→SV(一回拍出量)が低下→CO(心拍出量)、CI(心拍出量係数)が低下
- 前負荷(循環血液量)は足りているので、SVV(一回拍出量変化)は正常
- 後負荷(体血管抵抗)は正常なのでSVR(体血管抵抗)、SVRI(体血管抵抗係数)は正常
⇨前負荷も後負荷も正常なのにCOが下がったってことは、心臓自体に問題があるんだな
という消去法のために必要というだけです。難しいことはありません^^
この場合、血圧を上げるために必要なのは輸液でもノルアドレナリンでもありません。
選択肢に上がるのは心臓の働きを助けるドパミンやドブポン、或いは心エコーなどの原因検索です。
CO(心拍出量)、CI(心拍出量係数)、SVV(一回拍出量変化率)、SV(一回拍出量)、SVRI(体血管抵抗係数)
ビジレオモニターの見方まとめ
前負荷の評価:
SVV(一回拍出量変化)、CO(心拍出量)、CI(心拍出量係数)
後負荷の評価:
SVR(体血管抵抗)、SVRI(体血管抵抗係数)、CO(心拍出量)、CI(心拍出量係数)
収縮力の評価:
CO(心拍出量)、CI(心拍出量係数)、SVV(一回拍出量変化率)、SV(一回拍出量)、SVRI(体血管抵抗係数)
この領域を勉強するのにおすすめの参考書
ビジレオモニターについて詳しく解説されている書籍は実はとても少ないのですが、こちらはとても詳しく解説されています^^
ICU・HCUナース必携のおすすめ参考書
うちの病棟で持っていない人はいないんじゃないかというぐらい実用性の高いおすすめ参考書です
コメント